数多の検討により得たのは確実な品質と確かな書き心地

インタビュー

2023.4.27

今回のZOOM JOURNALは新生ZOOMのL2を設計した野田洋平氏にインタビュー当時の開発秘話から設計時の苦労話などもお聞きします

――新生ZOOM のL2の開発はどのように行われたのですか?

デザイナーから受け取ったデザインをもとに製品化するのが開発部の仕事ですがまずはボールペンやシャープペンの機能を持たせるために内部構造の構想から始めましたまずは手書きで大雑把な構成を考え徐々に固まってきたらCADを使って設計していき各部品のサイズ感を詳細に確認しリフィルなどの内部部品を納められるよう検討していきますそして何度も試作を行なって検討を繰り返し設計を固めていきました

――L2を開発するにあたって特に難しかったところはありますか?

L2は新生ZOOMの製品の中で最も細いスタイリッシュなデザインになっているため中に入っている部品を小さくする必要がありました特に先端の部品は純粋に円錐状のものがあるのではなく円錐の根本の部分が一段くびれている形状になっているためその分内部スペースも狭くなりますそこに必要な部品を納めることに非常に苦労しました小さい部品を使っていても耐久性が求められるため機能だけでなく耐久性も両立させることができるか常に考えていました例えばシャープペンシルはノックをすることで芯を出しますが長年使用して頂くことを考えるとそれまでに何回ノックするかを計算しその回数でも変わらず芯を出せる部品たちでなければなりません小さな部品同士がどのように接触して影響を与えているのかを考えて部品の材質や形状を検討し十分な耐久性が得られるように品質を作り込んでいきました

――特にこだわったところはありますか?

こだわった部分はたくさんあるのですがその中でも力を入れたのはL2の特徴である触り心地のよさを実現するためボディの塗装にこだわっています塗料の選定では様々な種類の試作を繰り返し触り心地はもちろんのこと長く使っていただいたときの剥がれにくさの評価も行ない念入りに検討しました

またノック部品の強度には非常に気を遣いました最初にデザインを見たときまずノック部分の強度に不安を覚えましただからと言ってデザインを太くすることはできないそこで部品の材質や作り方によって強度を高める手段を試行錯誤しようやく納得のいく仕上がりにすることができたんです実はこの製品の耐久性を確かめるために通常は機械を使って耐久性を確認するのですがお客様が使用するシーンにできるだけ近づけるために自分の手で1万回くらいノックしたんですもちろん強度としては問題なかったのですがもう2度と自分の手を使っての耐久テストはやりたくないですね

――開発者ならではのこだわりポイントはありますか?

ボディの塗装に関していくつもの種類の中から塗料の選定を行いましたが塗料を選定したら終わりではなくどのように塗装すればきれいな仕上がりになるかの検討にも実はすごくこだわりました例えば下地にホコリなど異物がついていたら当然きれいに塗れるはずもなくまた美しい色を表現するために下地の表面状態をより平滑にするなどの工夫もしていますそれは製品になったときにはわからない部分ですがそうしたところにもこだわりを持って開発しています

――最後にZOOM製品の中でお気に入りの一本を教えてください

やはり私が設計したということもありL2ですねカラーはマットフルブラックがお気に入りですまずデザインに関してスタイリッシュなデザインがお気に入りでその中でマットフルブラックは上から下まで真っ黒なボディの中2箇所だけ光沢を入れことでより引き締まったデザインになっていると思いますまた使い勝手にもこだわり細身ながら手にしっくりと馴染むように作り込んでいますのでぜひその書き心地のよさを体感していただければと思っています

野田さん設計秘話をお話いただきありがとうございました
次回のZOOM JOURNALはギフト特集ですお楽しみに!

Direction:MOSH books
Writer:前田和之
Photo:片岡祥