今回のZOOM JOURNALは、新生ZOOMのL2を設計した野田洋平氏にインタビュー。当時の開発秘話から、設計時の苦労話などもお聞きします。
――新生ZOOM のL2の開発はどのように行われたのですか?
デザイナーから受け取ったデザインをもとに製品化するのが開発部の仕事ですが、まずはボールペンやシャープペンの機能を持たせるために内部構造の構想から始めました。まずは手書きで大雑把な構成を考え、徐々に固まってきたら、CADを使って設計していき、各部品のサイズ感を詳細に確認し、リフィルなどの内部部品を納められるよう検討していきます。そして、何度も試作を行なって検討を繰り返し、設計を固めていきました。
――L2を開発するにあたって、特に難しかったところはありますか?
L2は、新生ZOOMの製品の中で最も細いスタイリッシュなデザインになっているため、中に入っている部品を小さくする必要がありました。特に先端の部品は、純粋に円錐状のものがあるのではなく、円錐の根本の部分が一段くびれている形状になっているため、その分内部スペースも狭くなります。そこに必要な部品を納めることに非常に苦労しました。小さい部品を使っていても耐久性が求められるため、機能だけでなく耐久性も両立させることができるか常に考えていました。例えば、シャープペンシルはノックをすることで芯を出しますが、長年使用して頂くことを考えると、それまでに何回ノックするかを計算し、その回数でも変わらず芯を出せる部品たちでなければなりません。小さな部品同士がどのように接触して影響を与えているのかを考えて部品の材質や形状を検討し、十分な耐久性が得られるように品質を作り込んでいきました。
――特にこだわったところはありますか?
こだわった部分はたくさんあるのですが、その中でも力を入れたのは、L2の特徴である触り心地のよさを実現するため、ボディの塗装にこだわっています。塗料の選定では様々な種類の試作を繰り返し、触り心地はもちろんのこと、長く使っていただいたときの剥がれにくさの評価も行ない、念入りに検討しました。
また、ノック部品の強度には、非常に気を遣いました。最初にデザインを見たとき、まずノック部分の強度に不安を覚えました。だからと言って、デザインを太くすることはできない。そこで、部品の材質や作り方によって強度を高める手段を試行錯誤し、ようやく納得のいく仕上がりにすることができたんです。実は、この製品の耐久性を確かめるために、通常は機械を使って耐久性を確認するのですが、お客様が使用するシーンにできるだけ近づけるために、自分の手で1万回くらいノックしたんです。もちろん、強度としては問題なかったのですが、もう2度と自分の手を使っての耐久テストはやりたくないですね(笑)。
――開発者ならではのこだわりポイントはありますか?
ボディの塗装に関して、いくつもの種類の中から塗料の選定を行いましたが、塗料を選定したら終わりではなく、どのように塗装すればきれいな仕上がりになるかの検討にも、実はすごくこだわりました。例えば、下地にホコリなど異物がついていたら当然きれいに塗れるはずもなく、また、美しい色を表現するために下地の表面状態をより平滑にするなどの工夫もしています。それは製品になったときにはわからない部分ですが、そうしたところにもこだわりを持って開発しています。
――最後にZOOM製品の中でお気に入りの一本を教えてください。
やはり私が設計したということもあり、L2ですね。カラーはマットフルブラックがお気に入りです。まず、デザインに関してスタイリッシュなデザインがお気に入りで、その中でマットフルブラックは上から下まで真っ黒なボディの中、2箇所だけ光沢を入れことで、より引き締まったデザインになっていると思います。また、使い勝手にもこだわり、細身ながら手にしっくりと馴染むように作り込んでいますので、ぜひ、その書き心地のよさを体感していただければと思っています。
野田さん設計秘話をお話いただきありがとうございました。
次回のZOOM JOURNALは、ギフト特集です。お楽しみに!
Direction:MOSH books
Writer:前田和之
Photo:片岡祥