今回のZOOM JOURNALは、新生ZOOMのC1とL1を設計した河野さんにインタビュー。
当時の開発秘話から、設計時の苦労話などもお聞きします。
――新生ZOOM のC1やL1の開発はどのように行われたのですか?
開発フローを簡単に説明すると、まずデザインを受け取った時点で、どのような品質を目指すのかを明確にした上で材料を選定したり、全体の部品構成や機能部分の内部構造などの構想設計をしていきます。そして、重要な部位などは早い段階から試作品を作り、デザイナーやプロジェクトメンバーとすり合わせながらより詳細な設計へと進めていきます。さらに、試作品や部品図などを用いて関連部門と打ち合わせを重ねながらブラッシュアップさせ、製品が完成するという流れです。
――C1やL1を設計するにあたって、特に難しかったところはありますか?
C1はやはりノック部分ですね。パッと見たとき、一般の方でも「強度は大丈夫?」と感じるのではないかと思いますが、その部分に関して、デザイン性や操作性だけでなく、強度などの耐久性も両立させるのに苦労しました、また、外装に関しても非常にこだわっていまして、色調や質感の仕上がりについては、何度もトライアンドエラーを重ねて、ようやく納得のいくものが出来上がったのです。そしてもう一点は、ボールペンとシャープペンの両立です。全く異なる2種類の内部構造を同じデザインで同時に設計を進めていくことは大変苦労しました。
L1は大きくキャップと本体軸の二つに分かれるのですが、キャップは外装に境界線や凹凸があるだけで見え方が大きく変わるので、いかにそれらを最小限に抑えるかということにこだわりました。また、本体軸はすりガラス調の透明になっているため内部構造が見えてしまうという難しさがあり、しかも、製造過程でホコリが入ってしまうと外側から見えてしまうなど、気をつけなければならない部分がたくさんありましたね。
――それぞれ特にこだわったところはありますか?
開発するにあたって考えていたのは、常にチャレンジして新しいものを取り入れるということです。その点において、やはりC1は浮いているノック部分に力を入れ、今までにない感触かつ心地よい使用感が実現できたのではないかと思っています。
L1に関しては、キャップの開け閉めの心地よさにこだわりました。この心地よさは感覚的なもので正解がありません。そのため、プロジェクトメンバー以外の方々にも評価してもらい調整を重ね、より多くの人が心地よいと感じられるように仕上げました。
――開発者ならではのこだわりポイントはありますか?
C1の特徴といえば浮いているノック部分ですが、ここはデザインとして優れているだけでなく、ちゃんと厚いものも挟めるように可動式のクリップに設計しています。またノックするときの静音性にも実はかなりこだわっています。
L1は、やはり先ほど申し上げたキャップの嵌合感と透明のボディですね。決して特徴的なデザインではありませんが、その分、細部にまでこだわりを持って設計しました。新生ZOOMは日本発ということで、全ての製品がMADE IN JAPANならではの丁寧さや精密さが伝わるような仕上がりを意識して開発していきました。
――最後にZOOM製品の中でお気に入りの一本を教えてください。
C1の設計にはすごくこだわりましたし、思い入れも強いのですが、実は今私が使っているのは、L1のグラファイトブルーなんです。ブルーブラックインクのリフィルを入れて使っているのですが、まず、私の黒い手帳にグラファイトブルーの色合いがすごくマッチしているのと、水性ゲルの書き心地がすごくいいんです。今まで私は普通に油性ブラックインクのボールペンを使っていたのですが、水性ゲルのブルーブラックインクを使うようになって、今までより書くことが楽しくなったような気がします。ですから、お客様にもぜひL1の書き心地を試していただければと思っています。
河野さん設計秘話をお話いただきありがとうございました。
次回は、野田さんにL2設計のお話を伺います。
Direction:MOSH books
Writer:前田和之
Photo:片岡祥