――ZOOMのグラフィックデザインについて教えてください。
ZOOMのリブランディングを行うにあたって重要視したのが、製品そのもののデザインばかりでなく、パッケージやコミュニケーションツールなどすべてにおいて一貫した世界観を構築することでした。そのときにコンセプトにしたのは、やはり「1本の、美学。」であり、型にはまらない自由さと凛とした日本の美意識です。そして、大人の知性と個性を際立たせるイメージを目指してグラフィックデザインを行いました。
グラフィックデザイナー、金井知広氏
――ZOOMのロゴマークについて教えてください。
ロゴマークを作る上で最初に考えたのは、ZOOMというロゴタイプのみで構成するのではなく、シンボルマークを新たに設けることでした。もちろんロゴタイプだけでもシンプルでスタイリッシュなものは作れますが、より強く印象づけるにはシンボルマークが必要だと考えたのです。
シンボルマークは、Zからインスパイアされる六角形をモチーフにした形状になっていますが、古くから日本の伝統模様で用いられている六角形を使いつつ、一筆書きで線を閉じないデザインにし、ZOOMが持つ日本の美意識と型にはまらない自由さが表現されています。
――ZOOMのブランドカラーについて教えてください。
ZOOMには2色のブランドカラーがあり、それがZOOMダークグレーとZOOMライトグレーです。ブランドカラーを決めるとき、まず始めたのが洗練されつつ、ZOOMらしい色味を探すことでした。その中で日本の伝統色にもある「藍鼠(あいねず)」という色に着目しました。日本の美意識を持ちながら、かつ、少し藍色が混じることで都会的な洗練された印象もある。そこからヒントを得て、この2色に決まりました。
理想のカラーを見つけるまで
様々なカラーをロゴと組み合わせて試行錯誤していた。
――パッケージについて、こだわった部分はありますか?
パッケージを作る上で大事にしたのは、商品を購入し、開封するときのワクワク感をいかに演出できるかということでした。そこでシンプルな四角い箱ではなく三角形という特徴的な形状にし、さらに、スリーブをつけて開封するまでの所作を一つ増やすことで、よりペンを目にしたときの高揚感が増すのではないかと考えたのです。もちろん、パッケージデザインの役割は、製品の魅力を際立たせることが最も大事ですが、ZOOMのパッケージには、それだけではない付加価値がつけられたと思っています。
ペンをパッケージから取り出す一連の所作にも洗練されたこだわりを感じる。
――パッケージの中に試筆用の紙を入れたのはどのような思いからですか?
ペンを開封したとき、きっと多くの人は試しに書いてみたくなると思うんです。そのとき、手元に紙がなかったり、あったとしても何かの裏紙だったりするよりは、きちんとした試筆用の紙の方が気持ちよく書いていただけるのではないかと考えました。また、試筆用の紙にはZOOMで書く最初の一文字を特別な体験にして欲しいという願いも試筆用の紙に込められています。
パッケージの中には試筆用の紙が同梱されているため
すぐに書き心地を試すことができる。
――そのほかグラフィックデザインで大切にしていることはありますか?
パッケージに限らず、紙袋や各店頭におけるディスプレイ、また、カタログやミニマガジンといったコミュニケーションツールなどすべてにおいて、制約を設けたり一貫性を持たせることです。例えば、媒体によって色の見え方が変化してしまうという難しさもあるのですが、そこもきちんと管理し、お客様が受ける印象がブレることのないように心がけています。そして、さまざまな場所でZOOMのグラフィックデザインを目にして、覚えていただけるようにしたいと考えています。
ギフトパッケージは2色展開。
専用のラッピング用紙とショッパーの統一感もポイント。
――最後にお客様にメッセージをお願いします。
ペンのデザインや書き心地ばかりでなく、パッケージも含めた世界観を楽しんでいただきたいと願っています。また、パッケージデザインを考えるときに大事にしたワクワク感は、自分で購入した商品を開けるときだけでなく、大切な人にプレゼントを贈る際にも欠かせないものだと思います。その点においても、ZOOMのパッケージはギフト用の包装として十分な役割を果たすと思いますので、自分用としてだけでなく、ギフト用としても、ぜひZOOMを選んでいただけたら幸いです。
Direction:MOSH books
Writer:前田和之
Photo:木村文平