Designer's Impression|安藤大春
デザイナーの"遊び心"が隠されているZOOM L1

Designer's Impression

2024.9.30

各分野で活躍するデザイナーの方々にZOOMを手にしてもらいプロの視点で印象を語っていただくDesigner’s Impression今回はMIDDLAミドラOhalオーハルなど自身のブランドを複数展開し異業種コラボやアーティスト衣装グッズデザインなど精力的に活動するファッションデザイナーの安藤大春さんにお話を伺いました。

“手描き”がもっとも頭の中のイメージを忠実に表現できる

――まずはご自身のブランドMIDDLAOhalについて教えていただけますか?

MIDDLAは2015年に立ち上げたレディースブランドでとある日の東京の日常をコンセプトにしています一方Ohalは2021年に立ち上げたメンズブランドで音楽とともに存在していく上質なワードローブをコンセプトにしていますそのほか自身のブランドとしてMIDDLAとトンボ鉛筆さんのMONOとのコラボレーションブランドMONO×MIDDLAモノミドラも展開しています。

――MONO×MIDDLAはどのような経緯でスタートしたのでしょうか?

MIDDLA普段からデザインにトラッドな要素を取り入れることを心がけておりずっとオリジナルのストライプを取り入れたいと思っていたのですがなかなか良いストライプの生地と出会えずに悩んでいました

そんなときふと手元にあったMONO消しゴムを見てこれだ!と気づく瞬間があったんですMONOは黒という多くの方々に長く愛され続けているストライプでありMIDDLAのメインカラーも青や白だったのでこれを生地にできたら面白い!と思ってすぐにトンボ鉛筆さんに問い合わせて何とかプレゼンする機会を得ました

MONOのストライプを使用するにあたり単なるTシャツにMONO消しゴムをプリントするような単発の企画にはしたくなかったのでMONOのトリコロールカラーを使ったブランドにしたいとプレゼンしOKをいただきましたMONO×MIDDLAMONOのトリコロールをただプリントするのではなく国産の綿糸に先染めしたテキスタイルにこだわってつくっています。

――MONO×MIDDLAでMONOのストライプを軸に展開されているように何かしらテーマを決めてデザインされることが多いのでしょうか?

僕は映画のような物語性のある作品からインスピレーションを得るのではなくテーマを決めてそれを拡げてデザインを作っていくタイプですたとえば2024年10月に行うMIDDLAの春夏コレクションでは花の蕾をテーマにしスカートや袖を蕾のシルエットにアレンジするというような進め方をしています。

――テーマを決めてからデザインに至るまでのプロセスを教えて頂けますか?

生地によってできる加工とできない加工があるのでデザインと生地選びを同時に進めていきます大枠のデザインを手描きし方向性を決めたら1着ずつ大きく描いてここは透けさせようここは光沢感のある生地にしようなどディテールを詰めます生地とデザインが決まったらパタンナーさんに渡して型紙を起こしてもらい試作品をつくっていきます。

――デザイン画はすべて手描きなのですか? 手描きへのこだわりがあれば教えてください。

自分のブランドに関しては完全に手描きですねほかの仕事でIllustratorやPhotoshopなどのソフトを使うこともありますがそれでも最初は手でデザインを描きスキャンしてデジタル化しています手描きをする理由は頭の中のイメージをもっとも忠実に表現できるからです手描きが脳と手が直結しているのに比べてソフトでつくると頭の中からアウトプットまでの工程が増えてその分イメージを正しく表現するのが難しいと感じます

あとデジタルにはもうひとつ弊害があって簡単に描けてしまうんです極端な話ポケットいっぱいにしちゃおうなど簡単にコピペで増やせるのででもそれをしてしまうと自分のデザインではなくなってしまいます。

キャップ先端部分の曲線にデザイナーの遊び心が隠されている

――ZOOM日本発のコンテンポラリーデザインペンです 今回安藤さんは透き通った素材の中心に硬質な輝きを放つキャップ式の水性ゲルボールペンZOOM L1気になるペンとして挙げて頂きましたがまずは率直な感想を聞かせてください。

実は僕中学生のころからZOOM 505をずっと愛用していたんですZOOM L1ZOOM 505に少しデザインが似ていて嬉しくなりましたねZOOMらしい感覚がありつつ透き通った素材を採用するなど現代的にアップデートされている部分も感じます

中でも特に好きなのはキャップの先端部分の曲線です普通だったらもう少しへこませて指の腹がハマりやすいようにしそうですが少し膨らませて引っかかりを出しているのがいいですね指の腹で触ったときに絶妙な気持ち良さがありますこの立体感はデザイナーさんが狙ってつくったものでないと出せなくデザイナーさんの遊び心が隠されていると思いますキャップを締めたときのピタッと感も気持ちいですね。

――素材の使い方や考え方でZOOMとファッションデザインに共通している点はありますか?

レディースブランドは異なる素材を組み合わせることが多くたとえば光沢アリとナシの素材を組み合わせたり透け感アリとナシの素材を組み合わせたりと組み合わせで遊ぶことは多いです

ZOOM L1ペン先の光沢素材とグリップのラバー素材を組み合わせたり外軸と中軸の素材を分けた二重構造で透け感を出しておりこの異素材によるハイブリッド手法は共通していると思います
あとカラー展開もおもしろいですねデザイナーさんが考えるZOOM L1らしさの中で重厚感のあるタイプと透け感のあるポップなタイプに分けてカラー展開していて並べたときに統一感があります僕もカラー展開は並べたときの統一感を大事にしているので通じる部分があります。

――貴重なレビューをありがとうございました! 最後に安藤さんがデザインするうえで最も大切にしていることは何ですか?

僕にとってデザインはEver Prototypeつまり”永遠に試作品”です

毎回試作品をつくりそこから手を加えて完成させますが大事なのは試作時点の考え方でそれが作品の核になるんですだから僕は試作品こそが完成形と考えています

またEver Prototypeにはデザインはどこまでも試作品であるという意味も込めていますデザインには答えがありません完璧と思える服をつくれたことは1度もなく今後もないと思います答えがないからこそファッションデザインは魅力的だとも思います。

安藤大春
ファッションデザイナーイラストレーター
2015年レディースブランドMIDDLAと立ち上げ
翌年TOKYO新人デザイナーファッション大賞プロ部門に入賞
2020年MONO(株式会社トンボ鉛筆)と協業によりブランドMONOxMIDDLAスタート
2021年メンズブランドOhalスタート
2023年MOSバーガーの新ユニフォームデザイン発表着用開始
そのほかロック〜クラシックまで様々な衣装デザイングッズデザインなど幅広くてがけている

WEBサイト:
安藤大春  http://ohalando.com
MIDDLA  http://middla.jp
Ohal   http://ohal.jp

Instagram:
安藤大春  https://www.instagram.com/ohal__ando/
MIDDLA  https://www.instagram.com/middla_official/
Ohal   https://www.instagram.com/ohal_official/

Direction:CREEK & RIVER
Writer & Photo:島尻明典

水性ゲルボールペン ZOOM L1