「MIDDLA」は2015年に立ち上げたレディースブランドで、「とある日の東京の日常」をコンセプトにしています。一方、「Ohal」は2021年に立ち上げたメンズブランドで、「音楽とともに存在していく上質なワードローブ」をコンセプトにしています。そのほか、自身のブランドとして、「MIDDLA」とトンボ鉛筆さんの「MONO」とのコラボレーションブランド「MONO×MIDDLA」(モノミドラ)も展開しています。
「MIDDLA」は、普段からデザインにトラッドな要素を取り入れることを心がけており、ずっとオリジナルのストライプを取り入れたいと思っていたのですが、なかなか良いストライプの生地と出会えずに悩んでいました。
そんなとき、ふと手元にあったMONO消しゴムを見て「これだ!」と気づく瞬間があったんです。MONOは、青、白、黒という、多くの方々に長く愛され続けているストライプであり、「MIDDLA」のメインカラーも青や白だったので、「これを生地にできたら面白い!」と思って、すぐにトンボ鉛筆さんに問い合わせて、何とかプレゼンする機会を得ました。
MONOのストライプを使用するにあたり、単なるTシャツにMONO消しゴムをプリントするような単発の企画にはしたくなかったので、「MONOのトリコロールカラーを使ったブランドにしたい」とプレゼンし、OKをいただきました。「MONO×MIDDLA」は、MONOのトリコロールをただプリントするのではなく、国産の綿糸に先染めしたテキスタイルにこだわってつくっています。
僕は、映画のような物語性のある作品からインスピレーションを得るのではなく、テーマを決めてそれを拡げてデザインを作っていくタイプです。たとえば、2024年10月に行う「MIDDLA」の春夏コレクションでは、「花の蕾」をテーマにし、スカートや袖を蕾のシルエットにアレンジする、というような進め方をしています。
生地によってできる加工とできない加工があるので、デザインと生地選びを同時に進めていきます。大枠のデザインを手描きし、方向性を決めたら、1着ずつ大きく描いて「ここは透けさせよう」や「ここは光沢感のある生地にしよう」などディテールを詰めます。生地とデザインが決まったら、パタンナーさんに渡して型紙を起こしてもらい、試作品をつくっていきます。
自分のブランドに関しては完全に手描きですね。ほかの仕事でIllustratorやPhotoshopなどのソフトを使うこともありますが、それでも最初は手でデザインを描き、スキャンしてデジタル化しています。手描きをする理由は、頭の中のイメージをもっとも忠実に表現できるからです。手描きが脳と手が直結しているのに比べて、ソフトでつくると頭の中からアウトプットまでの工程が増えて、その分イメージを正しく表現するのが難しいと感じます。
あと、デジタルにはもうひとつ弊害があって、簡単に描けてしまうんです。極端な話、「ポケットいっぱいにしちゃおう」など、簡単にコピペで増やせるので。でもそれをしてしまうと、自分のデザインではなくなってしまいます。
実は僕、中学生のころから「ZOOM 505」をずっと愛用していたんです。「ZOOM L1」は、「ZOOM 505」に少しデザインが似ていて嬉しくなりましたね。ZOOMらしい感覚がありつつ、透き通った素材を採用するなど現代的にアップデートされている部分も感じます。
中でも特に好きなのは、キャップの先端部分の曲線です。普通だったらもう少しへこませて指の腹がハマりやすいようにしそうですが、少し膨らませて引っかかりを出しているのがいいですね。指の腹で触ったときに絶妙な気持ち良さがあります。この立体感はデザイナーさんが狙ってつくったものでないと出せなく、デザイナーさんの遊び心が隠されていると思います。キャップを締めたときのピタッと感も気持ちいですね。
レディースブランドは異なる素材を組み合わせることが多く、たとえば光沢アリとナシの素材を組み合わせたり、透け感アリとナシの素材を組み合わせたりと、組み合わせで遊ぶことは多いです。
「ZOOM L1」も、ペン先の光沢素材とグリップのラバー素材を組み合わせたり、外軸と中軸の素材を分けた二重構造で透け感を出しており、この異素材によるハイブリッド手法は共通していると思います。
あとカラー展開もおもしろいですね。デザイナーさんが考える「ZOOM L1」らしさの中で、重厚感のあるタイプと透け感のあるポップなタイプに分けてカラー展開していて、並べたときに統一感があります。僕もカラー展開は並べたときの統一感を大事にしているので、通じる部分があります。
僕にとってデザインは「Ever Prototype」、つまり”永遠に試作品”です。
毎回、試作品をつくり、そこから手を加えて完成させますが、大事なのは試作時点の考え方で、それが作品の核になるんです。だから僕は「試作品こそが完成形」と考えています。
また「Ever Prototype」には、「デザインは、どこまでも試作品である」という意味も込めています。デザインには答えがありません。「完璧」と思える服をつくれたことは1度もなく、今後もないと思います。答えがないからこそ、ファッションデザインは魅力的だとも思います。
安藤大春
ファッションデザイナー・イラストレーター。
2015年、レディースブランド「MIDDLA」と立ち上げ、
翌年、TOKYO新人デザイナーファッション大賞プロ部門に入賞。
2020年、MONO(株式会社トンボ鉛筆)と協業によりブランド「MONOxMIDDLA」スタート。
2021年、メンズブランド「Ohal」スタート。
2023年、MOSバーガーの新ユニフォームデザイン発表、着用開始。
そのほか、ロック〜クラシックまで様々な衣装デザイン、グッズデザインなど幅広くてがけている。
WEBサイト:
安藤大春 http://ohalando.com
MIDDLA http://middla.jp
Ohal http://ohal.jp
Instagram:
安藤大春 https://www.instagram.com/ohal__ando/
MIDDLA https://www.instagram.com/middla_official/
Ohal https://www.instagram.com/ohal_official/
Direction:CREEK & RIVER
Writer & Photo:島尻明典