Designer's Impression|鈴木啓太
“適材適所”に成功しているZOOM L1

Designer's Impression

2024.7.29

各分野で活躍するデザイナーの方々にZOOMを手にしてもらいプロの視点で印象を語っていただくDesigner’s Impression今回は富士山ふじやまグラスや相模鉄道20000系ハイブランドのウインドウディスプレイなど常に革新的なデザインを世に送り続けているプロダクトデザイナーの鈴木啓太さんにお話を伺いました。

堅実な革新を目指す鈴木啓太のデザイン

――鈴木さんは鉄道車両からカトラリーまでさまざまな種類のプロダクトデザインを手掛けていますがご自身はどのようなデザイナーでありたいと考えていますか?

僕は自分のデザインコンセプトのひとつに堅実な革新を掲げていますどんなモノにも紡がれてきた歴史があり僕はその歴史をたどることで原点を捉え堅実に未来につなげていきたいといつも考えています

堅実な革新をデザインとしてアウトプットする際は機能性と美しさを融合することを意識しています日常の中で便利に使うことができかつ美しい使う人を選ばないデザインをつくるこれが僕が目指している姿です

――では実際にデザインはどのようなプロセスで進められるのでしょうか?

相模鉄道20000系の時はまず鉄道発祥の地であるイギリスに行きヨーク国立鉄道博物館を見学しましたそして歴史を学びながら現代の鉄道デザインを考え最初につくりたいと思ったのが吊り革です機能的で美しい吊り革をつくり鉄道車両の新しいアイコンにしたいと思ったんですそのようにして吊り革など手元に使うところからデザインを始め車両全体に広げていきました

実作業ではモックアップ原寸模型をたくさんつくり実際に手に取りながら機能性と美しさのバランスを見極め最適解を探していきます

――デザイン構想時に大切にされていることはありますか?

僕の場合文字を書くより紙に線を描くことの方が多くデザインも紙に1本の線を引くことから始まります手を動かして線を描くことで脳が活性化し頭の中がだんだん整理されていくんです

アイデアをその場でアウトプットできるように紙とペンは常に身の周りに置いています瞬間的なクリエイティブに対応できるのはパソコンではなく紙とペンですねペンで線を引くことは僕にとって創造の原点といえます

ZOOM L1には線が伸びていく感覚がある

――ZOOM日本発のコンテンポラリーデザインペンです 今回試していただいたキャップ式の水性ゲルボールペンZOOM L1の率直な感想を聞かせてください。

僕は筆圧を強めにしても淀みなく線を弾けるペンが好きですがZOOM L1はまさに流れるような描き心地ですね線が伸びていく感覚があってとても使いやすいです

持ったときの太さと重さのバランスもいいですねZOOM L1はちょうど中心に重心があり手の収まりがよく持つこと自体が気持ちいいです。

素材も面白いです外軸と中軸の素材を分けた二重構造にしてあり周囲の光の環境の変化で見え方が変わるので使う楽しさがあります適材適所が上手くいっていると思います。

――適材適所とは?

僕はプロダクトの素材は適材適所であるべきと考えていますモノの部分ごとに適した素材があるんですよZOOM L1は外軸の透過素材や先端が汚れても拭き取りやすい素材持ち手がフィットしやすいようマットな素材を選んでいるなど適材適所に成功していると思います一見シンプルだけどよく見るとこだわっているこういうモノが長く使われ続けるのではないでしょうか。

――貴重なレビューをありがとうございました!
最後に鈴木さんにとってのデザインとは?

モノの歴史と原点を受け継ぎ未来の唯一無二を探していく試みです。

モノの歴史をしっかりと反映し素材選びとデザインに細部にまで徹底的にこだわったプロダクトは必ずお客さまに伝わり感動してもらえる唯一無二の存在になれると思います1年後に淘汰されるようなものではなく100年後にもデザインの遺伝子が残っているようなモノをつくっていきたいです。

鈴木啓太
プロダクトデザイナークリエイティブディレクター古美術収集家の祖父の影響で幼少より人が織りなす文化や歴史に興味を持つ森林活用から都市環境伝統工芸から3Dプリンティングなどのアディティブマニュファクチャリングまで幅広い分野に精通し美意識と機能性を融合させたデザインで国内外でプロジェクトを手掛ける

Direction:CREEK & RIVER 
Writer & Photo:島尻明典

水性ゲルボールペン ZOOM L1