手書き文字はとてもフィジカル|近藤千草

手書きプラス

2024.8.30

デジタルが主流になりつつある現代において手で書くことに造詣が深い方々にお話しを伺い手書きの魅力を伝える手書きプラス今回は手紙にまつわる執筆や作成サービスなどを行い手紙の魅力を開拓し続けているPOSTORYの近藤千草さんにお話を伺いました。

手紙の魅力は人の想いに触れられること

――近藤さんは2014年にPOSTORYを立ち上げられていますが趣旨と立ち上げたきっかけを教えていただけますか?

手紙を書く時間は相手のことを想い自分のことを見つめる時間になりそれは自分や周囲を大切にすることにもつながりますそんな時間を増やしたいと思い“手紙を書く時間”を創造するプロジェクトとしてPOSTORYを立ち上げました。

手紙に興味を持ったのは切手がきっかけでした江戸生まれの洋画家である高橋由一のが描かれた切手を見てまるで掛け軸のようだと感じ意匠の美しさにときめいたんですそして切手や郵便に興味を持ち調べるうちに万国郵便連合UPUの理念である地球上のほぼすべての地域から固定料金に近い形で郵便物が送れることにたくさんの国々が合意していると知りこれは世界が平和でなければ成し得ないものだと感じ手紙の持つ平和的な側面や可能性に興味を持つようになりました。

――そのような手紙の持つ平和的な側面や可能性をPOSTORYの活動の中で感じたことはありますか?

印象深いのは上皇后陛下に所縁のある団体の代表の方から絵本を出版したため手紙と一緒に上皇后陛下に献上したいということでその手紙文のご依頼をいただいたときのことですね絵本と手紙をお送りし絵本は受け取っていただくことはできなかったのですが手紙は上皇后陛下にお渡ししましたと宮内庁の方からご連絡があったという喜びのご報告がありました上皇后陛下のような通常であればお会いすることができない方にも手紙であれば受け取っていただける可能性がありますそれは手紙が人の純粋な気持ちや想いを届けられるツールだからだと考えています。

――手紙が純粋な想いを届けられるツールというのはデジタル社会で生活しているとなかなか気づけないことですね。

手紙に携わると人の純粋な想いに感動することが多いんです以前とある経営者の方から退職する社員に手紙を出したいので文面を一緒に考えてほしいと依頼されたことがありましたその依頼文はかなりの長文で大変読みやすくかつ退職なさる方のことを巧みに表現していらっしゃいましたそのような決して文面を考えるのが苦手ではない方が特別な手紙を書きたいと思いあえて私に依頼をくださいました
相手への慰労や感謝の想いを形で表現しようとする真摯な姿勢になんて美しいのだろうと感動しました手紙の魅力はこのような人の想いに触れられることだと思います

手書き文字にはその人らしさが表れる

――近藤さんは手紙を書くときどのような筆記用具を使うことが多いですか?

友人からいただいたガラスのペンや大分県の湯布院でつくられた竹のペンなど自分にとって思い入れのある筆記用具を使用することが多いですねカジュアルな手紙を書くときはインクの色を変えて趣向を凝らしたりもします。

――今回ZOOM L2を実際に使われてみた印象はいかがでしょうか?

とても持ちやすいですね手と指先に馴染む感覚でしっくり来ます書いてみるとすーっと伸びていく滑らかな書き心地ですすっきりと美しくきちんとした印象でいつも使いたい使えるようにそばに置いておきたい1本だと思います

――そのほか手書きならではの良さがあれば教えてください。

最近はSNSなどで手軽にメッセージのやり取りができますが会社の同僚や友人に向けての場合は口語体でよいのでたまに手書きにすると人となりが一緒に伝わって思いがけず喜ばれることも多いと思います。

――確かに人からもらったメモ書き程度でも手書きであると嬉しいものですよねこの人こんな字書くんだという意外な発見があったりもします。

その通りです手書きの魅力は思考に基づく身体性個の表現ができること手書き文字は声と同じくらいとてもフィジカルで唯一無二なんです自分の考えをフィジカルにオリジナリティをもって表現できるのが手書きだと思いますパートナーや友人同僚が書いた文字を見ると新たな発見があるかもしれません。

――手書き文字を見ると相手の顔も思い浮かびますよね近藤さんが手書きの魅力を感じた印象的な体験があれば教えていただけますか?

私は亡くなった祖母からもらった手紙を宝物にしています祖母とはメールのやり取りをしていたのですが祖母の手書き文字が欲しくておねだりしました

その手紙には鉛筆で私の一番好きな人と書かれていましたその素朴な鉛筆の文字に祖母の私への愛情が込められているのが伝わって嬉しかったですね

この手紙を読み返すたびに祖母が私のことを想い愛を込めて書いてくれたんだという事実を何度でも受け止めることができます
手紙は残るもの嬉しいときも悲しいときもいつでも読み返せますそして手書きだからこそ相手の想いに触れると同時にその人が持つ唯一無二の温かさを感じられるのです

近藤千草

POSTORY代表おもに経営者層への手紙コンサルティング企業用プロダクト製作撮影執筆などを行う手紙に関するおもな連載に折り折りの美─手紙の時間─はいばらオンラインミュージアム/日本橋榛原もう一度読みたい文豪の手紙かもめの本棚online/東海教育研究所など
WEBサイト:https://postory.jp/
Instagram:@postory_jp

Direction:CREEK & RIVER 
Writer & Photo:島尻明典

Pen:ZOOM L2sumire)