手書きは感情や考えの大事な部分をダイレクトにアウトプットできる|大江静芳

手書きプラス

2025.12.23

デジタルが主流になりつつある現代において手で書くことに造詣が深い方々にお話しを伺い手書きの魅力を伝える手書きプラス今回は2014年に書道教室静芳書塾を開塾しYouTubeチャンネル静芳せいほうのYouTube書塾や個人企業向けのペン字講座講師ロゴ提供各種筆耕など幅広く活動する大江静芳先生に大人になってから書道ペン字を始める魅力や手書きの楽しさについて伺いました。

書道は階段を上るように段階的に上達していく

――大江先生は大学卒業後に静芳書塾を開塾され都立高校の書道講師を務めるほかNHK Eテレにも講師として出演するなど精力的に活動されていますそんな中2025年から静芳書塾オンラインを始められましたまずはオンライン活動を始めた理由から教えてください

2020年から始めたYouTubeの影響が大きいですね特に大人の視聴者の方からさまざまな反響があり静芳書塾で学びたいという声を数多くいただきましたただ静芳書塾は町の書道教室で近隣の方々を中心に教えているので遠方の方が定期的に参加するのは難しいですそこでオンラインで静芳書塾を始めようと思いましたまた私自身が全国の人たちとつながり書道の仲間づくりがしたいと考えていたのも理由のひとつです。

――静芳書塾ではお子さんに教え静芳書塾オンラインでは社会人に教えることが多いと思いますが書が上手くなるのに大人と子どもで違いはありますか?

幼い子はこんな感じかなと感覚で書く子が多いのですが大人はこの線を伸ばしてここで止めてと考えながら書く人が多いと思います考えながら書くことはとても大事なので理屈を理解できればすぐに上達できますが考えすぎるあまりになんで上手く書けないの?という思考が頭の中を占拠してしまってそのモヤモヤが上達を妨げてしまうことはありますねでもその分書と向き合い壁を乗り越えて上達したときの喜びは大きいと思います。

――書道とは壁を乗り越えるように上手くなっていくのですか?

書道は坂道を上るというよりは階段を上るように段階的に上達していきます上手く書けない期間がありそれでも続けているとある日を境に書けるようになるんですこれは子どもの例ですがひらがなのは筆を縦ではなく横にして払うのですがこれがなかなか難しくて1~2週間かかる子もいます それが突然綺麗な横向きの払いになって上手く書ける瞬間が来るんです体が突然ひらめくような感覚でできた!と自分でもすぐに分かります。

――書道って成長を実感しやすい分野なんですね少し意外でした

段位やコンクールなど自分の上達を可視化できる機会も多いんですよ静芳書塾オンラインでもメンバーみんなで公募展に挑戦してみましたが賞をもらう方も多く達成感と自身の成長を感じている方が多いと思います大人になるほど人から褒められたり自分の成長を実感できる機会が減っていくと思うので書道やペン字は大人の方にもおすすめです。

手と筆が一体化する感覚を得たときアドレナリンが出るのを感じる

――大江先生ご自身は書や手書きにどんな喜びや楽しさを見出していますか?

もっとも喜びを感じたのは高校生のときです私に大学で書道を学ぶことを勧めてくれた先生の筆遣いがまるで生きているように感じられましたなんでこんなことができるの?とショックでしたが先生に習っているうちに少しずつ自分の筆遣いが変わっていき先生の筆に近づくことができましたそれまでも書道は好きでしたがこのときの嬉しさが強く残っています

いま楽しいのは書いていて自分の手と筆が一体化する感覚を得たときですこういうときはイメージした通りの線形を書くことができますアドレナリンが出るのを感じ心から楽しくなります

――日常生活でも手書きをされることは多いですか?

外出時はスマートフォンのメモ機能を使うこともありますが家では手書きをすることの方が多いですね特に手帳をよく使っています

手書きで日記を書いたり書を書くことで1日の中で自分に向き合い整理する時間を作っているんですただのメモならスマートフォンで十分ですが書くという行為をともなうことでより心を落ち着かせて整理ができると思いますそれに手書きをすると言葉がどんどん出てくるんです私自身の感覚としては指先と手腕を動かす刺激が脳に伝達されてどんどん言葉やアイデアが浮かんでいくようなイメージです

手書き自体に私のために時間を割いて書いてくれたと伝える効果がある

――確かに手を動かすことで脳が刺激されるという経験に心当たりがある方も多いと思います。

それに手書きは紙面のどこに書くのも自由で文字に大小や強弱をつけるのも簡単ですデジタルはソフトによっては行えますが時間がかかりますこの簡単さが実は大事で自分の感情や考えの大事な部分をダイレクトにアウトプットでき後で確認したときにそのときの気持ちや思考を思い出しやすいと思いますデジタルは文字が羅列してアウトプットされるので書いたときの気持ちまではなかなか思い出すことはできません

また手書きは人に想いを伝えるツールとしても機能しますよね今の時代は手書きであること自体に相手に私のために時間を割いて書いてくれたと伝える効果があります年賀状もそうだしちょっとしたプレゼントに付箋を添えてひと言書くだけでも気持ちを伝えられます

――日常生活で手書きをするときはどんな筆記具を使っていますか?

ボールペンを使うことが多いです油性ではなくゲルインクの方が文字に強弱を付けられるので好んで使っています軸も同じく強弱を付けやすいので太い方が好きで重さもある程度あった方書きやすいです軽いと握り込んでしまい可動域が狭くなってしまうことがありますから

ZOOM L1は太さと重さのバランスがよくちょうど私好みですゲルインクで文字に強弱を付けやすくインクの乾きが早いのもいいですね手帳に日記を書くときや封筒に宛名書きをするときに使いたいです

――貴重なお話をありがとうございました最後に大江先生にとって書くこととは何かを教えてください。

書くことは私にとって頭と心を整える手段です。

気持ちや考えを表現したいときや人に何かを伝えたいときに書くという行為をともなうことで頭の中の考えがよりクリアに整理され心を落ち着かせることができます手書きには頭と心を整えて自分の内面と向き合うマインドフルネスの効果があると思います。

大江静芳

書道家9歳から書道を始め小林勧掌に師事大東文化大学 文学部書道学科で教員免許を取得し卒業後静芳書塾を開塾2020年YouTubeチャンネル静芳せいほうのYouTube書塾をスタートし現在は登録者数14万人テレビ出演や書籍出版個人企業向けのペン字講座講師ロゴ提供など幅広く活動する。

大江静芳 Webサイト 静芳(せいほう)のYouTube書塾

Direction:CREEK & RIVER
Writer:島尻明典
Photo:吉村永

Pen:ZOOM L1(スモークカッパー)