Designer's Impression|田渕将吾
ミニマルな美しさの中に他と違うユニークネスがあるZOOM L2

Designer's Impression

2025.9.26

各分野で活躍するデザイナーの方々にZOOMを手にしてもらいプロの視点で印象を語っていただくDesigner’s Impression今回はアートディレクターインタラクションデザイナーとしてWebサイトや大型サイネージなどデジタル領域のデザインを行う一方で働き方の未来を支えるさまざまなインターネットサービスを運営する事業会社でクリエイティブディレクターとしても活動する田渕将吾さんにお話を伺いました。

手描きはアイデアや表現を形にするときの出発点

――田渕さんはS5 Studiosというご自身のスタジオでデザイナーをされており2025年4月にはインターネット界で最も名誉ある賞といわれる国際デジタル芸術科学アカデミー主催のThe Webby Awardsで最優秀賞を受賞されましたどのような作品で受賞されたのですか?

クリエイターやアーティストのマネジメントを行う株式会社ONの採用サイトですニコニコ動画のコメント表示をモチーフにしたり国外から見た日本のアニメ文化を表現に落とし込むなどストリートカルチャーのエッセンスをデザインに取り入れましたかなりユニークに表現しましたが評価してもらえて嬉しく思います。

株式会社ON|採用サイト

――一方で田渕さんは即戦力人材と企業をつなぐ転職サイトビズリーチなどの事業を展開する株式会社ビズリーチにも所属されていますこちらの事業会社ではどのような活動をされているんですか?

クリエイティブディレクターとしてコーポレートのブランドマネジメントに携わっていますたとえば2025年8月に公開した株式会社ビズリーチのキャリア採用サイトでは全体設計からクリエイティブディレクションビジュアルや演出そしてアウトプットのデザインまで一貫して行いました自身の所属している会社のブランディングなのでプロジェクトが始まる前の戦略や目的段階から把握しており個人で請け負うのとは違う楽しさがあります。

株式会社ビズリーチ|キャリア採用サイト

――株式会社ONも株式会社ビズリーチも同じ採用サイトですが受ける印象がまったく異なりますこの表現の違いはどのようにして生み出されるのですか?

その企業らしさやブランドらしさ僕は人格と呼んでいますがそれらを紐解くことが重要でそのためにメンバーの価値観を知ることやそれを言葉や絵にして共通認識をつくることを大切にしています株式会社ビズリーチの案件では経営から現場までの各キーパーソンにインタビューすることで彼らの共通した考えをコンテンツの構造へ落とし込みました株式会社ONでは会話の中で出てくるアイデアの種を拾い上げてコンテンツの演出に変換していきました

単にビジュアルを整えるのではなくその企業が抱える矛盾や葛藤まで受け止めることそれをデザインへ翻訳することで表現は単なる装飾ではなく生きた人格として立ち上がりますこうした工程を経ることでアウトプットは自然とユニークさを帯びていくのだと思います。

――企業やブランドのらしさをしっかり汲み取っていくことが大事なんですねその工程の中でもデザインを成功に導くキーとなるポイントは何でしょうか?

らしさをどう翻訳し具体化するかでしょうか
これは採用ブランディングだけに限ったことではなく企業ブランディングや広告施策体験設計であったとしてもこの部分に最もユニークネスが必要で大事なポイントだと思っています

作業としてはデジタル領域のデザイナーなので意外と思われるかもしれませんが頭の中に浮かんだ具体化したいアイデアをまずは絵コンテやラフ画を紙にたくさん描くところから始めます。

――パソコンではなく紙とペンを使うのですか?

はい紙とペンを使った手描きはアイデアや表現を形にするときの出発点だと思います少なくとも僕の場合イマジネーションを固める工程は手を使わないと成り立ちませんこの要素を入れるのはここかななど紙に描いて線を何度もなぞって納得がいかなかったら消してを繰り返すことで完成度が高まります

デジタルは整合性やスピードに優れていますが手描きには曖昧さや余白が残りますその余白こそが発想の広がりを生みアウトプットに独自性をもたらしてくれるのだと思います最終的な制作はデジタルツールを使いますがその前の大半の時間は紙とペンを使って設計しています

“日本の美”を現代的に翻訳してつくるとこのペンになる

――ZOOM日本発のコンテンポラリーデザインペンです今回田渕さんは逆円錐形のノックボタンを備えたスマートなシルエットが特徴のシャープペンシルZOOM L2気になるペンとして挙げていただきましたが率直な印象から教えてください。

まずはこの洗練された見た目とマットホワイトの色合いがとても好みですね僕はミニマルなスタイルが好きで自宅や作業場のインテリアもその目線で選んでいますがZOOM L2はまさに自分が好きなデザインです

でも見た目よりも実は手に持ったときの印象の方が驚きでしたねしっとりと手に吸い付くような感触がとても新鮮です

――感触が特徴的なのはZOOM L2のボディにソフトフィール塗装ネオラバサンを使用しているためですね加水分解耐性と耐擦傷が高くさわり心地の良さと機能性を両立させています。

そう伺って納得しました手に持ったときの感触がユニークでずっとさわっていたい気持ちになります実際に書いてみると重心のバランスがよくペンがブレることなく書きやすいのも嬉しいですねペン先がシャープなので狙った通りの場所にペン先を置いて書けるのも好印象です。

――デザイナー目線ではどのような感想を抱かれましたか?

ZOOM L2シンプルさの中に個性が宿るという”日本の美”を現代的に翻訳し再定義してデザインしている感じがしますミニマルな美しさの中に工学的な目線や新しい素材時代性他と違うユニークネスがありプロダクトデザイナーの方がこのペンにさまざまなものを込めているのではないでしょうか

道具を手にしたときに感じる小さな満足感が長い仕事の時間を支える基盤になりますZOOM L2はその役割を果たしながら日本の美意識を現代的に翻訳しているそんな気がしました

また日本発のコンテンポラリーデザインペンという考え方も面白いですね正直なところボールペンやシャーペンといった文房具がここまでこだわって商品開発をしていると思いませんでしたその価値観がとても素敵だと思いますしデザイナーとしても大いに共感します
僕自身今まで文房具について深く意識することはありませんでしたが今回文房具で自分の価値観に合うものを見つけられたのは大きな発見でしたこの出会いを機に文房具のプロダクトデザインにも注目していきたいですね

人の心を動かし社会に波紋を広げるインタラクション

――貴重なレビューをありがとうございました! 最後に田渕さんがデザイナーとして最も大切にしていることを教えてください。

インタラクションです。

インタラクションは狭義にはWebサイトのリンクをクリックしたときに起こるアニメーションなどユーザーとシステムの間の相互作用を指しますが僕が大切にしているのはもっと広い意味でのインタラクションです
人はWebサイトやアプリケーションを通じて情報を得るだけでなくその体験に心地よさや感動を覚え他者と共有することで次の行動や新しい考えへとつなげていきますそうした変化のきっかけを生み出すことが僕にとって理想のデザインです
つまりインタラクションとは人の心の揺らぎがきっかけとなりその影響が社会へと広がっていく波紋のような現象だと考えています小さな感情の揺らぎが連鎖しやがて文化や社会の姿を形づくっていく──その過程をデザインで支えていきたいと思っています。

田渕将吾

アートディレクターインタラクションデザイナー
自身のスタジオS5 Studiosを拠点にWebサイトやブランドのデザイン設計インタラクションデザインデジタルインスタレーションクリエイティブディレクションなどビジュアル表現とインタラクションの構造設計を中心に活動またデザイン関連の書籍やコラムへの執筆業など幅広く活動している2025年The Webby Awards最優秀賞を受賞。

Direction:CREEK & RIVER
Writer:島尻明典
Photo:吉村永

→ ZOOM L2