――kaduさんは2016年からインスタグラムに手書き作品を投稿し始め、それが「理想の字」と話題になり、本も出版されましたが、まずはご自身が「綺麗な字を書きたい」と思われたきっかけなどがあれば教えてください
書はもともと中学生になるまで習っていて得意だったんです。その後、中断していましたが、娘が小学生になり、書を習い始めた2008年に私も再開しました。「娘と一緒に書道教室に通ったら楽しいだろうな」と思ったのと、私の中で理想とする字の形があり、そこに近づきたかったんです。
――その「理想の字」とは、どのような字なのですか?
ひと言でいうと「優しさを感じる字」です。温かみのあるやわらかい線で、誰にとっても見やすく、多くの方に「いいね」と思ってもらえるような字が理想です。
実は、私の学生時代の同級生が書いていた字がとても好きで、その字への憧れが根底にあります。字をもっと綺麗に書きたいので、今もふたつの教室に通い、ペン習字、実用書道、書道を習っています。
――今も書を習い続けているのですね。一方で美文字講師として、オンライン講座やワークショップで字の書き方もレクチャーされていますが、よろしければ美文字のコツを聞かせてください
まずは背筋を伸ばして姿勢を正し、肘を気持ち前に置いて、腕の稼働範囲を広く取りましょう。また姿勢と同様に、ペンの持ち方も指の稼働範囲を意識するといいですね。具体的には、ペンを親指と人差し指で挟んで持ち、ほかの3本指は添えるだけにします。握り込むと、力が入って稼働範囲が狭くなるので、軽く持ちましょう。
実際に書くときは、画数の多い字は大きく、少ない字は小さく書くといいですよ。たとえば、ひらがなは画数が少なく、普通に書くと空白が目立って大きく見えてしまうので、小さく書くと全体のバランスがよくなります。
あとは、ゆっくり書くことが大事です。丁寧に時間を使うと、字にも反映されます。
――ゆっくり書くことで、字がどのように良くなるのですか?
丁寧に書くことで、最後まで線を意識して引くことができるようになります。そうすると、線を思った方向へ引きやすくなり、綺麗に書けたときの気持ちよさも味わえます。
それに、「字は内面を表す」と言われることがあります。もしそうなら、できるだけ綺麗な線を引き、美しい字を書きたいですよね。私も素直で美しい字を書きたいし、その想いをもって字と向き合っています。
――kaduさんは普段どのような筆記具を使うことが多いですか?
家で書くときはガラスペン、外出先では万年筆をよく使っています。あとボールペンもよく使います。ボールペンはインクで使い分けていて、油性ボールペンはスピード重視でさらさらと書きたいときに使い、油性とは違ったタイプの水性ポールペンや、ゲルインクのものは字をより綺麗に見せたい時などに好んで使っています。
――水性ボールペンで書いた方が、文字が綺麗にみえるのですか?
はい。水性の方が文字の書き始めの「打ち込み」を綺麗に表現しやすく、線の強弱も出しやすんです。特にペン先の太さが0.5mmか0.7mmのものが線を表現しやすいのでよく選んでいます。ちなみに、文房具屋さんで試し書きをするとき、私は縦書きで「のし」と書いています。線の強弱を確認しやすくておすすめですよ。
――今回、試していただいたZOOM L1も水性ゲルボールペンですが、印象はいかがですか?
とても書きやすいですね。インクの伸びがよく、発色も綺麗で素敵です。それにデザインもとてもおしゃれでかわいいですね。大人っぽい中にも優しさを感じます。デザインがいいので、仕事のときにも使いやすそうです。
――美文字講師以外の仕事もされているようですが、そこでも手書きをすることは多いですか?
そうですね、封筒の表書きを書いたり、仕事仲間にちょっとした手書きメモを渡すことがありますね。少しでも綺麗な字で書いて、相手にいい気分になってもらいたいと思いながら書いています。
デジタルでもいいのですが、私はやはり手書きにこだわりたいです。手書きはデジタルと違い、書いた人の個性も文字に反映されます。親しい人から手紙や手書きメモをもらうと、相手の顔が思い浮かぶし、大切に保管したくなりますよね。手書きはコミュニケーションツールとして、とても優れているのだと思います。
――確かに、手書きにはデジタル文字にはない情報を込められますよね。それでは改めて、kaduさんが考える「手書きの魅力」 を教えてください
「想いを乗せられる」ことです。私は、子どもが学校を卒業したときなど、家族の大切な節目で手紙を渡しており、「いつも味方だよ」や「ありがとう」といった感謝の気持ちなど、想いをしっかり伝えるように心がけています。面と向かってはなかなか言えないことでも、手書きなら伝えられます。
手書きの手紙を送るときは、間違えたらもう一度紙に書き直す必要があります。それは不便なことと思われがちですが、裏を返せば「その時間を大切にしている」ことを意味します。その「相手のことを想う時間」は、手書き文字に乗り、きっと伝わると思います。
美文字講師。2016年より手書き作品をSNSに投稿。優しさを感じさせる字が「理想の字」として人気になる。オンライン講座「美文字をめざす ボールペン字講座」やワークショップを開催し、美文字のコツや楽しさを提案。著書に『心がはずむ 毎日が潤う 書きたくなる美文字』(KADOKAWA)。
Instagram | @kadu2544
Direction:CREEK & RIVER
Writer:島尻明典
Photo:吉村永
Pen:ZOOM L1(マットブルー)